c65ac76f.jpg
ロバート・クレイス著、講談社文庫。この作品を読むために前作「破壊天使」をまず読んでみたわけですが、確実に成長してますね。ベースにあるのはお馴染みの立て篭もり?交渉人型のサスペンスですが、よくもまあこれだけ様々な要素を盛り込んだものだなあ、と。極上のエンタテインメントです。

誤って店員を撃ち殺してしまったコンビニ強盗3人組が逃げ込んだ先は、会計士と二人の子供が暮らす邸宅。凶悪な事件などほとんど起こらない田舎町だが、警察署長を務めるタリー は、自らの判断ミスで人質を殺させてしまったのを機に引退した元ロス市警の交渉係。過去との訣別、というのは物語の核のひとつですが、なおもひと癖もふた癖もあるんですね。

人質の父親は実は犯罪組織お抱えの会計士で、家の中にあるデータの奪還を狙い、マフィアが介入してきます。犯人・警察・マフィア、それぞれの思惑が交錯する三すくみの構造。さらに犯人側も一枚岩ではなく、三人目の男の正体が明らかになるにつれて展開も変わりますし、人質となった姉弟の活躍も鍵を握ります。いや、飽きないですねぇ。

結末がちょっと弱い気がしますが、要素を複雑に絡めつつも決して舌足らずにも冗長にもならず、文庫700頁弱の程よいボリュームにまとめました。ブルース・ウィリス主演の映画版はどうだったんでしょうか。☆☆☆☆(4.0)。