三毛猫ファンの駄文日記2

ドリコムさんから移転してきました。今後ともよろしくお願いします。

ごほん

感想文

 基本所謂ミーハー気質なので、ネットで話題のものとか、つい興味を持ってしまいます。荒天による早めの帰宅、場合により足止めも予想されましたので、時間をつぶせそうなものを調達。いわゆる芸能人本ではなく、新書の1冊としての出版ということで、発売前からちょいちょい話題に上がっていた「非選抜アイドル」を。

 著者の仲谷さんに関する私の前提知識は、購入者の中では、おそらく無い方です。顔と名前は分かるけど、アニメが好きで声優を目指しているということくらいしか知らなくて、テレビでこの人、と認識したことはなく、印象にあるのは、以前にラジオを聴いた際に、パーソナリティとしてゲストとトークするときの一人称が「仲谷」であることに若干の違和感を覚えた、そのくらいでしょうか。ブログなども拝見したことはなかったです。

 文章ですが、ライターの方が書いたようなあざとさが無く、平易ながらも言葉を丁寧に選んで綴っていることが感じられ、読みやすく好感が持てますね。文意が通らない箇所もないし、誤字も少ないですし、編集もしっかりしているよう。丁寧に読んで4,50分くらい。amazonのレビューはやや持ち上げすぎな印象で、目新しさとか、はっとする記述があるわけではなく、大枠はおおむね予想の範囲内でしょうか。以下、感想の羅列。

 言わんとすることは分かるのですが、非選抜に生きる人に送る、とか、非選抜があるから選抜が輝く、というニュアンスにはやや違和感があるかも。AKBというグループはあくまで通過点であり、自分が将来目標とするものによっては、必ずしもアイドルとしての高み(選抜)を目指す必要はなくて、自分で考えて努力をしていれば違う価値観の中で報われることがあり、それがこのグループならではの面白さであり魅力であるし、それに気付いた者は強い、というのが主たるメッセージかと。

 非選抜は選抜を輝かせているわけではなくて、異なる輝き方を見つけているわけですよね。また、同じ考え方が当てはまる場面、業界が他にどのくらいあるのか今ひとつピンと来なくて、読み物としては興味深いけど、ある種独特な世界の話だなあ(それが面白いのだけど)、と見てしまうのはちと醒めすぎているでしょうか。

 AKBに所属しているけれど最終的な目標は声優、などと聞くと、何となく違和感があったのですが、こういう風にして声優への道も開けてくるのか、AKBのメンバーという肩書きより、最後にはもっと深いところでの人との繋がりがものを言うんだなあ、という部分は興味深かったです。あとは、こういう普通の子が簡単に不登校になってしまうものなのか、とか、ムーサってそういう事務所だったんだ、とか。最後に、毎度のことではありますが、幼い頃に抱いた夢をずっと持ち続けてついには実現してしまうという生き方、漠然と現実に進めそうな道にふらふらと進んできた私からしてみれば、本当に素敵だな、と純粋に思います。

ミステリが読みたい 2008年版

まさに、「やっちまったなぁ」(クールポコ風に)という感じでしょうか。

出版前から、いまさら何だと非難轟々だったハヤカワのベストテン企画。今までのランキングは必ずしも一般読者の嗜好を反映してなかったから、とのとってつけたようなコンセプトの下、

(ランキングというのは、件のミシュランなんかと同じように、年間せいぜい100冊くらいしか読めない一般読者のために、本を読むいわばプロの人達が、こんな面白い本もあるんだと教えてあげることが本来の役割で、一般読者の売れ筋なんて気にしたらいけないわけです)

蓋を開けてみたら新訳、文庫化、再版ものOKの何でもあり、「ロング・グッドバイ」を1位にするためだけの恣意的なルール設定で、1?4位を早川が独占という完全な早川の御用雑誌。1円の価値もない。

このルールで拾われるのは実質、「ロング・グッドバイ」と「ずっとお城で暮らしてる」の2作しかない。2位のフランシス「再起」だって、近年の作より出来はよかったけど全盛期に比べたら見劣りするし、3位のアルテこそ、一部のマニアしか読んでないのにランキング上位の典型例だし。

で、早川といえば「市民ヴィンス」はどうしたよ。こういう売れなくても良作という作品は全然入らないし。毎年毎年、講談社マンセー・コーンウェルマンセーのイタイ読者の投票でコーンウェルを1位にして喜んでる講談社(インポケット)の方がよっぽど潔いじゃないか。

ただ、インポケットの評論家部門の1位がハイアセンなのも参った。15年来のハイアセンファンからすれば、中の下くらいの出来だとしか思えなかったのに。

今年は本当に不作だったのか、男は黙って?「このミス」を待ってみましょう。

罪の段階/子供の眼

ごほんカテゴリも、ぼちぼち追加していきます。長文の感想は自分でも面倒なんで、300文字×2冊くらいペースで。

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まずはR・N・パタースンの「子供の眼」。「罪の段階」以降ほったらかしてしまいましたが、やっぱりこの人は面白いですね。いわゆるリーガルサスペンスですが、政治的陰謀とか陪審の評議だとかは思いきってカットして、被告人側の人間関係と弁論の部分をじっくり書き込んで骨太の小説に仕上げています。

主人公パジェットは政界進出を目論む著名な弁護士で、その下で働く恋人テリーザは、夫リカードと5歳の娘の監護権を巡り係争中。リカードは、娘がパジェットの高校生になる息子カーロから性的虐待を受けているなどと主張し、パジェットたちの将来にも暗雲が垂れ込める中、リカードが不可解な死を遂げます。

一人称の小説ではなく、パジェット自身も不可解な行動をとっており、無罪の評決を得ると同時に恋人や息子の信頼も失うわけにはいかないという中で、いかなる戦術を選ぶのかという興味と、また読者にとってもパジェットへの嫌疑は最後の最後まで晴れないわけで、事件の真相への興味とで、いや読ませます。家族小説としても○。☆☆☆☆★(4.5)。

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もう1冊は、デヴィッド・マレル「廃墟ホテル」。いまどき何でこんなもん翻訳したんだろうという驚きと、原書の発表が昨年という驚き。バリバリの超古典的モダンホラー。ジャンルでいえば密室系マンハント小説ですが、展開があまりに直線的で、70年代の香りがします。

日本ではマレル=「ランボーの原作者」のイメージで20年変わりませんが、そのイメージ通りの作品ちゅうか、ホラー1本で進化を続ける職人ソールの「マンハッタン狩猟クラブ」なんかと比べたら、資質ちゅうか格が違うな、と。☆☆(2.0)。

クック/池永陽/ウェストレイク

たぶんね、当ブログのコンテンツで最も必要とされてないのは、「ごほん」だと思うんですよね。というわけで、ごほんについては時々何冊かまとめて紹介するよにしようと思います。今回はとりあえず3冊。

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トマス・クック「蜘蛛の巣の中へ」(文春文庫)
クックがまたしても作風を変えてきましたね。過去の甘美な記憶と悲劇、現在の絶望へという「記憶シリーズ」を終結させ、本作では最後に微かな希望が見出されます。父に反発して故郷を捨てた息子は、死期が間近に迫った父を看取るため生家に戻り、父の過去を知ると共に彼が息子をずっと軽蔑していた理由を知ることになります。悪徳保安官の牛耳る田舎町という随分古めかしい設定ですが、クックはもはや、ミステリにはそれほどこだわりが無いのかもしれません。「父と子」というテーマをじっくり書き込んだ佳作。☆☆☆☆(4.0)

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池永陽「でいごの花の下に」(集英社)
こちらは逆に、普通小説の作家がミステリに歩み寄ったような作風。そんなに目新しさは感じられないのですが、沖縄小説のスタンダードになりうる作品かもしれません。常に死を望んでいたカメラマンの若者と、来る日も来る日も地面を掘り返し続ける老人。底抜けに明るい沖縄と、今もウチナンチュの中に強く残る沖縄戦の記憶と、両者の鮮やかな対比が、実に印象的でした。日本人として、一年に一冊くらいは読んでおきたい。☆☆☆☆(4.0+)

ウェストレイク「弱気な死人」(ヴィレッジブックス)
本国では別名義で書かれたという、異国での死亡事故を擬装して保険金詐欺を企む夫婦の話なんですが、小品と呼ぶにもパワー不足。想像の域を出ない展開のまま終わってしまったのが、何とも残念。巨匠も今回はひと休み。☆☆☆(3.0)

迷宮の暗殺者

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デイヴィッド・アンブローズ著。ヴィレッジブックス。先日の「本の雑誌」ベスト50企画でもトリッキー部門に選ばれていた作品ですが、トリッキーというか、久々に読むバカ・ミステリですね。

主人公チャーリー・モンクは、秘密機関に所属する工作員。超人的な身体能力で要人の暗殺等の困難な任務をこなしていきますが、常に心を離れないのが、孤児院での少年時代に生き別れた初恋の相手・キャシーへの想い。

もう一人の主人公は、ある財団に雇われ、記憶喪失治療の研究をする医師、スーザン・フレミング。彼女の許に、彼もまた医師である夫がシベリアで事故死したとの報せが入り、彼は殺されたのだと主張する謎のジャーナリストが現れ、物語は動き始めます。

別々に進行していた二つのストーリーが交錯するとき明らかになる笑撃的な事実。その一瞬を迎えるとき、いま一歩現実感に欠けていた物語が、「記憶」をテーマにした壮大なスケールのバカ・ミステリへと変貌します。こいつは面白い。☆☆☆☆(4.0)。

ホステージ

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ロバート・クレイス著、講談社文庫。この作品を読むために前作「破壊天使」をまず読んでみたわけですが、確実に成長してますね。ベースにあるのはお馴染みの立て篭もり?交渉人型のサスペンスですが、よくもまあこれだけ様々な要素を盛り込んだものだなあ、と。極上のエンタテインメントです。

誤って店員を撃ち殺してしまったコンビニ強盗3人組が逃げ込んだ先は、会計士と二人の子供が暮らす邸宅。凶悪な事件などほとんど起こらない田舎町だが、警察署長を務めるタリー は、自らの判断ミスで人質を殺させてしまったのを機に引退した元ロス市警の交渉係。過去との訣別、というのは物語の核のひとつですが、なおもひと癖もふた癖もあるんですね。

人質の父親は実は犯罪組織お抱えの会計士で、家の中にあるデータの奪還を狙い、マフィアが介入してきます。犯人・警察・マフィア、それぞれの思惑が交錯する三すくみの構造。さらに犯人側も一枚岩ではなく、三人目の男の正体が明らかになるにつれて展開も変わりますし、人質となった姉弟の活躍も鍵を握ります。いや、飽きないですねぇ。

結末がちょっと弱い気がしますが、要素を複雑に絡めつつも決して舌足らずにも冗長にもならず、文庫700頁弱の程よいボリュームにまとめました。ブルース・ウィリス主演の映画版はどうだったんでしょうか。☆☆☆☆(4.0)。

文学刑事サーズデイ・ネクスト2

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2作目のジンクスもどこへやら、ほぼ完璧に思えた1作目を凌ぐスケールの物語で、こちらも☆☆☆☆☆(5.0)を付けるしかないですね。

ちょうど1作目が文庫落ちしたばかりなので、シリーズの紹介から入ります。パラレルワールドのイギリス(1985年)を舞台にした、女性刑事物のハードボイルドです。SF・ファンタジーアレルギーの私にも読めましたから、とにかく面白い小説が読みたい方には絶対お勧めです。必ず1作目から入ってくださいね。

主人公・サーズデイは「スペックオプス」という特殊警察の文学部門の一員です。この世界では文学の地位が異常に高い上に、本の世界に入れる特殊能力を持つ人間がいたり、逆に小説の登場人物がこちらの世界に現れたりといったことが起こるのです。作中の登場人物を人質にとったり、ストーリーに干渉して結末を変えるなんてこともできてしまうのです。さらに、時空を越えることのできる人物もいて、特殊警察には時空犯罪部門もあります。

何だか設定だけで満腹な感じもしますが、読者はそれほど戸惑うことなく、スピーディな展開に身を任せることができます。自分が想像(創造)した空間を、ここまで目一杯使うことのできる作家というのは、今まで無かった気がしますね。しかも1作目で隅から隅まで活かしきったはずの世界を、2作目でなお大きく膨らませてみせ、かつ物語は複雑な道具立てに溺れないだけのしっかりしたプロットを持っています。

とんでもない作家/シリーズだと思いますよ。細部の描写に至るまで全く手を抜いてませんし、絶妙な複線の張り方や小ネタで読者をニヤリとさせてくれます。この進んだ世界で、なぜ掃除機が未だに紙パック式なんだろうか、などと訝しんでいると、そんなことすら後の展開で意味を持ってくるんです。どれだけ大風呂敷を広げても、自在に操ってみせるのだから、並の力量じゃないですね。本国では4作目まで出ているらしいので、まだまだ楽しませてくれそうです。

焦熱の裁き

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デイヴィッド・ロビンス著、新潮文庫。年末のベストテンレースでは間違いなく黙殺される作品なので、こちらで推しておきます。元々ね、戦争小説の佳作でデビューした作家の日本3作目にして初のミステリ、注目度は限りなくゼロに近くて、スルーした評論家筋の方々も多いんじゃないでしょうか。

えらく前時代的な設定だし、文体もかためで、最初はかなりとっつきにくい印象を受けるかもしれません。

黒人の整備工・イライジャと白人の妻との間に産まれた子供は、脳が未発達で生後間もなくして息を引き取り、教会の墓地に埋葬される。しかし教会の執事たちは純潔の伝統に固執し、全員一致の決議で混血の子を墓から掘り返し、両親の許に返してしまう。

その夜、教会が放火され、現場に佇んでいたイライジャが容疑者として逮捕される。その後焼け跡から保安官の娘の焼死体が発見されるに至り、遺体に性交渉の痕と骨折が見られたことから、彼は強姦殺人の容疑までかけられることに。

彼の弁護を担当するのが、地元出身の弁護士・ナット。「リーガル巨編」を銘打っていますが、トゥローやパタースンのように、巨編と言えるような派手さはありません。「リーガル」の部分は実際には答弁取引だけで済んでしまうのですが、そこが非常に面白いんですね。反駁できるだけの材料が乏しい中で、無実を主張するイライジャに対し、ナットは刑期を最大限短縮する最良の選択として、陪審裁判(=死刑)を避けるため、放火による第二級謀殺を認めるよう提案します。「オルフォードの抗弁」だとか、アメリカの司法制度に独特の概念が此処彼処に登場して、興味深いです。

さらに事件の真相を探る中で、次第に明かされていく悲劇の連鎖。決して鮮やかな謎解きというのではなく、真相が重く、なお重くのしかかってきます。エンタテインメントとしてはかなりヘビーな部類ですが、登場人物たちの緻密な内面描写も物語のパーツとしてぴったり当て嵌まり、完成度は極めて高いですし、読後の満足感も大きいです。ちょっと甘めなんですが、☆☆☆☆☆(5.0)の価値はあるんじゃないかなぁ。名作です。

破壊天使

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ロバート・クレイス著。講談社文庫。

いやぁ、久々のごほんの紹介なのですが、厄介なのを読んでしまいました。みなさんに紹介したい類の作品じゃないんですよね。ごくごく標準レベルのサスペンス小説です。元爆発物処理班の女性刑事が爆弾魔と対決する、ハリウッド的なストーリーなのですが……

よかったところ
・ベテラン作家らしく、伏線の張り方や読者のミスリードの仕方が巧み。ストーリーもひと捻りふた捻りあって、決して「どっかで読んだことがある」では終わらせない。
・単発作品ながらもヒロインの造詣がしっかりしており、おのれの過去と向き合う姿が、頁数を割いてじっくりと描かれる。
・ありがちだが、ラストの対決シーンの緊迫感はさすが。そこに至るまでの600頁超にも、ほとんど無駄がなく一気読み必至。

わるかったところ
・爆弾マニアのサイトや掲示板だとか、チャットで犯人をおびき寄せる様子だとか、今となっては目新しさもなく、描写も貧弱に映る。
・犯人が少々薄っぺらい。ペーパーバックスケールの敵役。

総合して☆☆☆★(3.5)。新作「ホステージ」を読むために前作から読みましたが、敢えて掘り出して読むほどのもんじゃないかも。

本の雑誌企画

今月号の「本の雑誌」が、ここ10年間の翻訳ミステリから50冊選んで、そっからベスト10を選ぶという企画をやってるんですよ。50冊のラインナップの中には、年末のベスト10レースでは不遇をかこったあたし好み(≒評論家好み)の作品がたくさん入ってまして、あたしも50冊から10冊選んでちょっとコメントしたいなぁ、と。50冊のうち、9割は持ってて、8割は既読といった感じですね。

では、50冊からあたしが選ぶ10冊。その作家について、あたしがベストだと思ってる作品が選ばれてない場合は外しました。順位付けは適当。

1 隣の家の少女(ジャック・ケッチャム)
 地下室に監禁した少女を、400頁の間ひたすら虐待する小説。今の時代、もっと広く読まれていい。
2 ダーティホワイトボーイズ(スティーヴン・ハンター)
 軍事ミステリー、スナイパー小説でお馴染みのハンターがものした、シリーズ外伝的な傑作クライム・ノヴェル。実は引き出しの多い作家であることを教えてくれます。
3 さらば、愛しき鉤爪 (エリック・ガルシア)
 人間の皮を被った恐竜探偵が活躍するハードボイルド。設定はくだらないが中身は本格。
4 少年時代 (ロバート・マキャモン)
 あたしの生涯のベスト3の一角。
5 我が心臓の痛み(マイケル・コナリー)
 コナリーの最高傑作にして、エルロイと並ぶ現代アメリカミステリの到達点。主人公の設定が秀逸。 続きを読む
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